アクティブレストとは?効果と正しいやり方を医師が解説

更新日:8月31日
「疲れが抜けない」
「休日はしっかり寝たのに、月曜になっても体が重い」
働く方から、本当によく聞く言葉です。
疲れたら休む。多くの人が「休む=横になる、動かない」と考えます。もちろん、それが必要な日もあります。でも実は、あえて軽く体を動かしたほうが、疲れが早く抜けることがあるのです。これを「アクティブレスト(積極的休養)」と呼びます。
CrossFit Aoyama は、産業医・心療内科医が運営する厚生労働省認定の指定運動療法施設です。診察室で働く方を診る現場と、実際に体を動かしていただく現場。その両方から見えてきた「動いて休む」という考え方を、今日はお伝えします。
アクティブレスト(積極的休養)とは
アクティブレストとは、軽く体を動かすことで、かえって疲労回復を促す休養の方法です。日本語では「積極的休養」と訳されます。
対になるのが、「パッシブレスト(消極的休養)」。こちらは、寝る・横になる・じっとするなど、体を休めるタイプの休養です。
もともとはスポーツの世界で使われてきた考え方で、激しい試合や練習のあと、完全に休むのではなく、軽いジョギングやストレッチをして体をほぐす。あの「クールダウン」も、アクティブレストのひとつです。
大事なのは、どちらが良い・悪いではなく、状況に合わせて使い分けること。ここは後ほど触れます。
そもそも「休養」には二つの側面がある
ここで、少し言葉の話をさせてください。
厚生労働省の整理では、休養は「休む」ことと「養う」ことの両方を含むものとされています。
「休む」のほうは、仕事や活動によって生じた心身の疲労を回復し、元の活力ある状態に戻す側面です。一方の「養う」は、明日に向かって鋭気を養い、身体的にも精神的にも健康の能力を高めていく側面を指します。
実は、多くの方が休養だと思ってやっているのは前半だけです。
寝て、ゼロに戻す。それはたしかに休養なのですが、そこで終わってしまうと、次の週もまた同じ地点から始めることになってしまいます。アクティブレストが注目されるのは、この「養う」側を担えるからでもあるのです。
なぜ「動いて休む」ほうが、回復するのか
「疲れているのに動くなんて、逆効果では?」と思われるかもしれません。でも、軽い運動には、回復を助けるいくつかの働きがあります。
① 血流が良くなり、回復が促される
軽く体を動かすと血流が良くなり、酸素や栄養が全身に巡ります。
かつては「軽い運動で乳酸を流すため」と説明されてきましたが、近年の研究では、乳酸そのものは疲労の主な原因ではないと分かってきました。それでも、軽い運動で血流が良くなること自体が、疲労回復に役立つという点は変わりません。じっと座り続けているより、少し動いたほうが、体は巡ります。
② 自律神経のバランスが整う
デスクワークやストレスが続くと、体を緊張させる交感神経が優位になりがちです。軽い運動や、そのあとのゆったりした時間は、リラックスに関わる副交感神経への切り替えを助けます。「動いて、ほどく」ことで、自律神経のバランスが整いやすくなります。
③ 気分が安定する
運動が気分に良い変化をもたらすことには、しっかりした根拠があります。
WHOの身体活動・座位行動ガイドライン(2020年)では、身体活動の効果として、不安やうつの症状の軽減、そして睡眠の改善が挙げられています。体を動かすと頭の中がスッキリするのは、気のせいではないのです。
それだけなら、マッサージでも同じはず
ここまで読んで、こう思われた方はいないでしょうか。
血流が良くなるだけなら、マッサージや入浴でも同じではないか、と。
まったくそのとおりです。そして、ここからが本題になります。
産業保健の研究には、回復経験という考え方があります。オフの時間に何が起きていれば「回復した」と言えるのかを整理したもので、よく挙げられるのが次の四つです。
・仕事から心理的に離れられていること
・心身が緩んでいること
・仕事とは別の領域で何かを達成できていること
・自分で過ごし方を選べていること
さて、寝ているだけの休みを、この四つに当てはめてみるとどうなるでしょうか?
たしかに緩んではいます。けれども仕事のことは頭から離れていないことが多いですし、別の達成もありません。そして自分で選んだというより、動けないから寝ていた、という方も少なくないはずです。四つのうち、一つしか満たしていないことになります。
では、軽く体を動かすと何が起きるか。
動いている間は仕事のことを考えにくくなりますし、終われば体は緩みます。昨日より少し長く歩けた、という小さな達成も生まれる。しかも行くかどうかも、どこまでやるかも、自分で決めています。
四つとも埋まるのです。
血流の話も本当だと思います。ただ、それだけならマッサージでも同じはずですよね。実際には、自分で決めて自分で動いたことのほうが大きいのではないか。私たちはそう考えています。
こんな人・こんなときに向いています
・デスクワークで、一日中同じ姿勢。肩や腰が重い
・運動した翌日、筋肉痛や体のだるさが残っている(回復日)
・大きな病気やケガではないけれど、なんとなく体が重い
・ストレスで頭が休まらない。気分を切り替えたい
どれも、「しっかり休んだはずなのに、スッキリしない」という状態です。そんなときこそ、少しだけ動いてみてください。
アクティブレストの具体的なやり方
難しく考える必要はありません。ポイントは「軽く、ほどよく」です。
・軽い有酸素運動:ウォーキング、軽いジョギング、水泳、サイクリング
・ストレッチ・モビリティ:関節をゆっくり大きく動かす
・ヨガ:呼吸を意識しながら、体をほぐす
強度の目安は「ニコニコペース」。息が弾んでも、隣の人と会話ができるくらいの軽さです。ゼエゼエと追い込んではいけません。それはもう休養ではなく、トレーニングになってしまいます。
時間は20〜30分ほどで十分。「物足りないかな」と感じるくらいで、ちょうどいいんです。
なお、日常の目安としては、厚生労働省の『健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023』で、成人は歩行以上の身体活動を1日60分程度(およそ8,000歩)、筋力トレーニングを週2〜3回とされています。数字を見て構えてしまう方も多いのですが、一駅歩く、階段を使う、昼に外へ出る。そのくらいから始めれば十分です。
ただし、「完全に休む」べき日もあります
ここは大切なところです。アクティブレストは万能ではありません。
・睡眠が足りていない
・発熱している、体調を崩している
・強い疲労で、動くのがつらい
こういうときは、無理に動かず、しっかり寝て休む「消極的休養」が正解です。軽い疲れにはアクティブレスト、深い疲れにはパッシブレスト。この使い分けを、自分の体と相談しながら選んでください。
回復には段階があり、時期によってやるべきことが逆になります。限界に近い時期は、静かに休むほうが9割。少し戻ってきたら7対3、心地よい疲れを感じられるところまで来たら半々。そんな感覚で捉えていただくと、判断しやすくなるはずです。
「頭が働かない」を、休み方の問題にしないでください
もうひとつ、お伝えしておきたいことがあります。
ここ数年、ブレインフォグという言葉をよく聞くようになりました。頭に霧がかかったようで考えがまとまらない、集中が続かない、言葉が出てこない。脳疲労という言い方をされることもあります。
先に申し上げておくと、どちらも正式な診断名ではなく、症状を言い表した言葉です。
そして同じ言葉で語られているものの中に、原因のまったく違うものが混ざっています。単に睡眠が足りていないだけのこともあれば、うつや適応障害の症状として出ていることもある。甲状腺の機能低下、貧血、ビタミンの不足といった身体の病気が背景に隠れていることも、決して珍しくありません。
睡眠不足が原因なら、休み方を変えれば戻ってきます。ここまで書いてきたアクティブレストの話も、そのまま当てはまるでしょう。けれども後半に挙げたものは、いくら休んでも変わりません。
目安をひとつ挙げておきます。十分に眠れているのに頭が働かない。あるいは、休んだ日と休んでいない日で差がない。このどちらかに当てはまるようでしたら、それは休み方の問題ではない可能性があります。
一度、医療機関で相談してみてください。血液検査で分かることも、少なくありませんから。
CrossFitと、アクティブレスト
CrossFit というと「とにかくキツい」というイメージがあるかもしれません。実際、追い込む日のCrossFitは、けっして「軽く動かす」とは言えない運動です。
それでも私たちが、この時間を回復として捉えているのには理由があります。さきほどの四つのうち、三つがはっきり満たされるからです。
やっている60分のあいだ、仕事のことを考える余裕がありません。目の前の動きに集中しているうちに、心理的に離れるどころの話ではなくなっています。昨日はできなかった動きができるようになる瞬間もありますし、行くかどうかも、どこまでやるかも、ご自身で決めていただいています。
その最中は、緩んではいません。けれども終わったあとには、頭のなかが空になっている。意識して考えを止めようとするより、こちらのほうがよほど簡単ではないでしょうか?
そしてCrossFitのもうひとつの特徴が、強度を自在に調整できることです。
CrossFit Aoyama では、コーチが一人ひとりの体力やその日のコンディションに合わせて、動きや重さを調整(スケーリング)します。だから、追い込む日もあれば、血流を促して整える「動いて休む」日もつくれる。回復を目的にした、軽めのモビリティやコンディショニングのクラスも活用できます。
しかも、ひとりで黙々とやるのではなく、コーチや仲間と一緒に動きます。体をほぐしながら、気分まで晴れていく。これはアクティブレストと非常に相性が良いと感じています。
CrossFit Aoyama は、厚生労働省認定の指定運動療法施設です。医師(産業医・心療内科医)が運営し、「動いて整える」を、安全に、続けやすいかたちで提供しています。
まとめ
・アクティブレスト(積極的休養)とは、軽く体を動かすことで疲労回復を促す休養法。対になるのが、じっと休むパッシブレスト(消極的休養)
・厚生労働省の整理では、休養には「休む」と「養う」の二つの側面がある。寝るだけでは前半しか満たせない
・血流促進・自律神経のバランス調整・気分の安定という働きがある
・ただし、それだけならマッサージでも同じ。回復に必要な四つ(心理的に離れる・緩む・別の達成・自分で選ぶ)のうち、寝ているだけでは一つしか埋まらない
・やり方は「ニコニコペース」で20〜30分。追い込まないのがコツ
・ただし睡眠不足・発熱・強い疲労のときは、しっかり休む消極的休養を
・十分眠れているのに頭が働かないときは、休み方ではなく医療の問題かもしれない
・CrossFit は強度を調整できるので、「動いて休む」設計にも向いている
疲れたら、ただ止まるのではなく、少し動いて巡らせる。その選択肢を持っておくと、体はぐっと楽になります。
休んで、そして養う。この二つがそろって、はじめて休養になるのですから。
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監修:薮野淳也(CrossFit Aoyama オーナー/産業医・心療内科医/著書『産業医が教える 会社の休み方』中公新書ラクレ)
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参考文献
・厚生労働省『健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023』
・厚生労働省 e-ヘルスネット『健やかな睡眠と休養』/『休養・こころの健康づくり』
・WHO『身体活動および座位行動に関するガイドライン』(2020年)


